2025年07月02日
シャーシダイナモ
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YZF-R125 aRacer(アレーサー)インジェクションチューニング
皆様こんにちは。Garage414 ソニックチワワ セッティング担当のシュンです。
今回は、YAMAHA YZF-R125にR15用のaRacer(アレーサー)を使用してインジェクションチューニングを行いましたので、ご紹介いたします。
YZF-R125やR15/R15Mに関するお問合せを多くいただくことから、選択肢の一つとしてこの構成をご紹介させていただきます。
また、aRacerのオプション品であるクイックシフターとAutoTuneも同時に取り付け・セッティングを行いましたので、併せてご紹介いたします。
インジェクションコントローラーの使い方がわからずお困りの方や、セッティングについてのご相談も、どうぞお気軽にご連絡ください♪
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車両紹介
ヤマハ | YAMAHA YZF-R125 国内仕様車
・MWRレーシングエアフィルター
・エアクリナーボックスの上蓋レス
・SAKURAレーシングフルエキゾースト
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使用するツール
・aRacer(アレーサー)【限定ローズゴールドカラー RC SuperX コンプリートECU】
YZF-R125/XSR125/MT125国内仕様
国内正規代理店様より、125cc用のベースデータを収録したものを購入させていただきました。本来は150cc用のフルコンですが問題なく使用可能です。
・aRacer(アレーサー) クイックシフターKit【QS Racing V2 】 aRacer ECU専用
スロットルを戻す操作やクラッチ操作なしでシフトアップが可能になります。
現時点でのRC SUPER-Xと併用できる最高モデルとなっております。
・ Pro-Linkケーブル
PCとECUを接続するためのケーブルです。ECUと高速データ通信をすることが可能になります。ケーブル単品で少々高価ですが効果は抜群です。
※Wi-Fiでも接続可能ですが、不安定さが目立ちました。書き換え中に接続が切れることも多々ありました。
・AF3 ワイドバンドO2センサーLSU4.9付属 空燃比モジュール
第三世代ワイドバンドO2センサー付きモジュールです。
このO2センサーは純正品よりも洗練されており、精度+反応速度が段違いに良いとの事。またこのモデルからレースガス等の特殊燃料に対応する機能を設けられているとのことで、よりカスタムの幅が広がっていますね。
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aRacerを装着するに至った経緯
装着を決めた一番の理由は、パワー不足です。
この車両は他のミニバイクよりも一回り大きな車格・車重があるため、車体の重さに対してパワーが物足りず、特にカートコースではGSX-R125に追いつけない場面が多くありました。
そこで、サブコンよりも調整項目が多いaRacerを導入することで、さらなるパワーアップが期待できると考えました。
また、シフターに関しても課題がありました。
純正のクイックシフタースイッチはストロークが長く、スムーズなシフトチェンジが難しい状況でした。
さらに、以前使用していたPowerTronicの感圧式スイッチではシフトアームの締め付けトルクに制限があり、ガタつきが発生。その影響で、バンク中にシフトアップが入らないことも多々ありました。感度設定を度々行いましたが解決には至らなかったです。
こうした不満点を改善したいという思いから、aRacerへの変更を決断しました。
加えて、AutoTuneにも興味があったため、導入に至りました。
YZF-R15Mで使用していたPowerTronicについてのブログはコチラ!
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取り付け
純正のECUと交換するだけで利用できます。
本体から出ているハーネスはオプションパーツを取り付けるためのカプラです。
合わせてAF3取り付け!個人的にはAutoTuneを使うなら自分でマップを0から書いた方が早くて間違いない…というのが本音なのですが、aRacerの製品は使用したことが無かったので試してみることに!
自分で書いたマップとAutoTuneで作成したデータを見比べて今後の参考にします。
実走行での空燃比を基に燃調を変更してくれるという点に魅力を感じています。
専用のO2センサーを取り付けて、純正のO2センサーは無効化しました。
というのも純正のO2が繋がっているとかなり厄介なことが起きてですね・・・
また機会があればこの話を書いてみよう思います。
こちらのECUでは撤去してもエラーコードは出ないので優秀でした。
続いてクイックシフタースイッチです。専用ハーネスをaRacerのECU本体へ接続します。
圧力と張力どちらで制御するかは専用ソフトから変更可能です。スイッチ本体のストロークはほとんどありません。
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主な調整内容
・燃料噴射量MAP
・点火時期MAP
・AutoTune
・クイックシフター設定
今回は一番影響の大きい4つの項目についてご紹介いたします。
どれもマシンのポテンシャルを引き出すために必須の調整項目です。
他にも多岐にわたって調整項目がありますが、ブログでは書き切れないほどたくさんあるので主要部分以外は割愛させていただきます。
最初に排気量設定155→125、インジェクター容量を135→120に変更します。
セッティング項目のかなり下のほうにありますが、大前提となる初期設定ですのでご注意ください。
今回購入したパッケージでは既にR125用に設定済みでした。
150ccデータを125cc用に作り変える手間が省けてとても助かりました♪国内に正規代理店があるツールは良いですね!
①燃料噴射量の調節
今回は本体に収録済みの125cc用データを基に、現車セッティングしていきました。
あくまでも汎用的なデータなので現車に合わせての調整が必須となります。
ベースマップの他にエンジン回転数×スロットル開度のマップが1速~6速まで並んでいます。
今回は全てのギアを統括した[TPS factor]だけ調整しました。
②点火時期MAP
続いて点火時期の制御マップです。エンジン内の混合気に点火するタイミングを調整できます。より良い点火時期がエンジンの性能・効率・安全性を最大限に引き出します。
一番難しいですが、一番パワーアップできるポイントです。
点火時期は早すぎると異常燃焼(ノッキング)が起き、遅すぎると排気温度が上がりすぎてエンジン内部への負荷が増えます。早すぎても遅すぎてもダメという難しい調整項目です。
シャーシダイナモでの測定結果をもとに少しずつ調整しました。
こちらも燃調と同様にベースマップ+1~6速のマップが作成可能です。
それに加えて「大気温度毎での進角/遅角」、「エンジン温度毎の遅角設定」等細かく調整が可能です。
エンジン温度が高くなったら遅角の制御を入れる等、エンジン保護機能までついています。
一般的にインジェクションコントローラーでは点火時期の調整が出来ないものも多く、出来る場合でも実際の点火時期を確認することは出来ず、純正データに対して「~%補正」や「~度 進角/遅角」というものが多いです。特に割合で調整するときは実際に何度動いているか計算してから触らないとノッキングのリスクが高いので要注意です。
一方aRacerはさすがフルコン!
上死点前の点火角度を確認してから調整することが可能です。
測定中に実際に今何度で点火しているかも一目でわかるのはセッティングしやすかったです。
③AutoTune
今回は、手書きのセッティングに加えて、AutoTuneも併用していきます。
使用前には、シリンダーヘッドの排気口からO2センサーまでの距離や、作動させるエンジン温度などの初期設定を一通り行いました。
下のマップは、AutoTune機能の中で最も重要となる「Target AFR(目標空燃比)」の項目です。
ここで設定した理想の空燃比に近づけるよう、自動で燃料補正を行ってくれます。
ただし、“この空燃比が正解である”という前提に基づいて補正が行われるため、細かい最適化にはやや不向きかもしれません。
エンジンの個体差や装着しているカスタムパーツの内容によって、最もパワーが出る空燃比は異なります。
そのため、あくまで「これくらいの空燃比が理想」という大まかな指標を実現するための機能と考えるべきです。
なお、AutoTuneは“最もパワーが出る空燃比”に自動で合わせてくれる機能ではありません。
こちらが実際のセッティング画面です。
リアルタイムでAFR(空燃比)を測定し、燃調マップに補正を加えてくれます。
スロットルの開け方や開度を段階的に変えながらデータを収集し、その変化に応じて補正値が反映されていくのが確認できました。
ところが、ここで問題が発生しました。
異常な補正値が入力され、燃料が80%も追加されてしまったのです。
これはさすがに濃すぎで、エンジンがゴボついて吹けなくなる原因になります。
この現象が起きたのは、コーナー立ち上がりでよく使うスロットル開度の領域。
ここに過剰な補正が入ると、「スロットルを開けても加速しない」という非常に危険な状況になりかねません。
おそらく、7300回転でVVA(可変バルブ)切り替えが発生する瞬間に一時的な空燃比の乱れがあり、それをECUが「極度な燃料不足」と誤認した可能性があります。
このような場面では、一瞬の空燃比を厳密に補正するよりも、その後の繋がりや走行フィーリングを優先した方が良いと判断しました。
また、スロットル急開時や減速からの再加速時(微開け)といった変化の大きい領域では、AutoTuneの補正がやや過剰になる傾向も感じました。
一部、手動で補正値を見直す必要はありましたが、AutoTuneは概ね良好な補正を行ってくれる有用な機能でした。
特に広範囲な空燃比補正を自動で行ってくれる点は、セッティング作業の手間を大きく軽減してくれます。
ただし、すべてをAutoTune任せにするのではなく、必要に応じて手動での見直しを行うことが前提となると感じました。
④クイックシフター調整
クイックシフターの設定は、誤った調整を行うとミッションを傷める可能性が高い項目です。そのため、ギアシフト時の負荷に合わせたセッティングが必要です。
この項目では、クイックシフターの基本的な設定を変更できます。
たとえば、シフト操作時に「燃料カット」「点火遅角」「点火カット」のいずれを採用するかを選択可能です。
カットタイムは長く設定すればシフト時の負荷を軽減でき、短くすることで加速性能を高めることができます。
今回は、実走行を想定し、回転数に応じたカットタイムの調整を行いました。
また設定項目に「クローズドループ機能」というものがありました。
これを有効化にすると、クイックシフター作動後に実際のシフト完了状態をセンサーで検出し、必要に応じてカット時間や燃料補正を自動的に調整してくれるようです。
無駄なカット時間の短縮やシフトミスの補完を行ってくれるのでシフトフィールの向上が見込めます。カット時間が短くてもミッションへのダメージが最小限になるので嬉しい機能ですね。
こちらの機能は事前に1速~6速までのギア比やフロント/リアスプロケットの丁数など入力する必要がありますのでご注意ください。
当社のテスト車両ではファイナル変更を頻繁に行うので、まだ使用していませんが、セットが決まっている方は使ってみるといいかもしれません。
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調整前後での比較
スロットル全開時での比較です。
青色のグラフはR15Mで使用していたサブコンをR125に装着してセッティングを出していたデータです。
赤色グラフが今回aRacerを用いて調整を行ったデータです。
全域で0.5馬力ほどパワーアップできています!
既にセッティング済みの車両からさらにパワーアップできたのは大きな成果です。
特にスロットル開度50%前後ではトルクの出方から圧倒的に良くなっています。
7300回転でVVA(可変バルブ)が作動し、大きくパワーが出るポイントですが、今回はその繋がりが格段に良くなりました。
以前のセッティングでは、一旦停滞した後に急にパワーバンドへ入るような出力特性でしたが、今回の調整により、滑らかでスムーズな立ち上がりに改善されました。
この変化には、点火時期の調整が大きく影響していると感じています。
VVAの作動タイミングも変更可能なため、今後はトルクカーブがどう変化するか、さまざまなパターンでテストしていく予定です。
クイックシフターはスポーツランドTAMADAのカートコースにて実走テストしました。
ライダーの光元からは、「シフトフィーリングが格段に良くなった」との感想がありました。
これまではシフトアップ時にチェンジペダルが突っ張るような感触があり、点火カットもうまく作動しないことが多々ありましたが、aRacer QS V2 に変更後はストレスなく、思い通りのシフト操作が可能になりました。
やはり高性能スイッチはいいですね!
メーカーの紹介では「MOTO GPグレードの圧電センサー設計を採用し、ARRCトップ競技の検証に合格しました」と記載があります(^^)
電制スロットル車ではシフトダウン時のオートブリッピングにも対応しているとのことです。
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今回ご紹介した内容は主要な調整項目の一部に過ぎません。走行シーンに応じて、さらに詳細なセッティングを詰めることも可能です。モジュールを追加すればGPSロガーとしてECUデータをロギング/解析することも出来るようです。
ということで、今回はYZF-R125のセッティング事例をご紹介しました。
aRacerはグレードを問わず、非常に多機能で柔軟な調整が可能なツールです。
本記事では触れていませんが、カスタムパーツの装着によって不安定になった箇所を補正する設定項目も多数用意されています。
今後は、実走でしか確認できない「トラクションコントロール制御」や「エンジンブレーキ制御」などを中心に、さらなるテストを進めていく予定です。
特にトラクションコントロールについては制御マップも多数あり、調整の幅も広そうなので、これからいろいろと試してみたいと思います。
このように、Garage414 Sonic Chihuahuaでは様々なツールを活用し、車両の性能を引き出します!
サーキットでの走行はもちろんのこと、ツーリングメインで快適性を向上させたい場合もセッティングは効果的です。
・マシンをもっと速くしたい
・セッティングツールを購入したけれど扱い方が分からない
・マフラーを交換したから燃調をとりたい
・アクセルのドン突きが気になる
・アフターファイヤが頻発する 等々
少しでもインジェクションチューニングやパワーチェックに興味を持っていただければ幸いです。
詳しく知りたい方、自分の車両で何ができるのか気になる方は、ぜひお問い合わせください♪
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担当:トクナガ
メール:sonic_chihuahua@garage414.com
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