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2023年04月28日

シャーシダイナモ

ZX-14R ICONⅢ インジェクションチューニング

こんにちは。Garage414 Sonic Chihuahua セッティング担当のシュンです。

今回はZX-14Rのインジェクションチューニングをご依頼いただきました。
加速感のたるさ」や「ドン突き」を感じるということで入庫していただきました。
サブコンピュータが既に取り付け済でしたのでセッティングをさせていただきました。

使用するサブコンは[BLUE LIGHTNING RACING製 ICONⅢ]です。

PC不要で簡易的に燃料噴射量の調整や、電子スロットルのレスポンスを変更できます。
今回は燃料噴射量の調節のみ調整しました。

一般的なサブコンピュータはパソコンに接続してマップを書き込見ますが、今回はパソコン不要ということでボタンをポチポチと押してマップを作製しました。

①~⑥の流れでご紹介いたします。

①車両の仕様紹介
②使用するサブコンについて
③現状の測定
④調整について
⑤前後比較
⑥まとめ/感想

①車両の仕様紹介
KAWASAKI ZX-14R 北米仕様
エンジンはノーマル
二次エアカット済
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マフラー:トリックスターフルエキゾースト
エアクリーナーエレメント:純正
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②使用するサブコンについて
[BLUE LIGHTNING RACING製 ICONⅢ]
パソコン不要で簡易的にセッティングが可能なインジェクションコントローラーです。
エンジン回転数と吸気量、スロットルポジションから燃料噴射量を補正することが可能です。
-50%~+50%までの範囲で燃料の増減が可能です。
また電子スロットルのレスポンス設定やデータログ機能が搭載されています。
乗車した状態でスロットルポジション等のパラメーターを見ることが出来ます!

こちらのサブコンピュータは他社製品と同様に初期設定が必要です。この作業を行わないと正しくセッティングをすることが出来ませんのでご注意ください。
初期設定はA/B/Cモード各々設定する必要があります。
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車両設定で重要な項目は「点火入力」「センサータイプ」「スロットルパラメーター」です。
点火入力ではクランクパルスを正しくサブコンに入力する為に必須の項目です。「ALL」もしくは「1」のどちらかを選択可能です。
「ALL」を選択したところサブコンに入力される回転数が乱れてしまいました。エンジンは5000回転まで回っているのに2000回転の表示をしたりします。これでは回転数が正確に取得できていないので燃料噴射量の調整をしても正しく補正できません。
「1」を選ぶと問題なくエンジンの回転数を取得できました。これは車両によって設定が違うと思いますので設定される場合は注意してご確認ください。

センサータイプでは補正を加える際の要素を選択します。[Pressure][Throttle]から選択できます。
今回は吸気量に対しての補正ではなく、ライダーのスロットル開度に応じて補正を行いたかったので[Throttle]を選択しています。

最後にスロットルパラメーターです。こちらはスロットル開度に応じて変化する電圧を使用してスロットル開度を割り出してくれます。最小電圧と最大電圧を登録しておくことでリアルタイムでスロットル開度が何%なのかわかるようになります。またこのパーセンテージとエンジン回転数に応じてセットした補正が入るので、正確に設定を行いましょう。
電子スロットルのレスポンス変更の項目でもスロットル開度の初期設定を正しく行っていないと誤作動しますのでご注意ください。

③現状の測定
・公開しているパワーグラフは補正してあります。(修正係数:SAE)
簡単にご説明すると「夏に測定しても、冬に測定しても近い馬力になる」ということです。馬力としては低めに出ることが多いですが、再現性が高いので比較するにはもってこいです。
・使用する送風機は3台
・冷却水温度85~90度で測定
冷却水温度は振れ幅が激しかったので85~90度の範囲で測定しています。本来は油温を一定に揃えた状態で測定することが好ましいです。油温計が未装着でしたので水温で条件を揃えました。

スロットル開度10%のパワーグラフ
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この領域では空燃比は大きく崩れているわけではありませんでした。開け始めの1500回転~2250回転あたりまでの燃料が濃くスロットルのたるさが目立ちました。そこまで大きく補正を入れる必要はなさそうですね。


スロットル開度25%のパワーグラフ
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こちらの開度域でも低回転域~中回転域の空燃比はかなり整っています。7500回転以上の高回転域からは燃料の濃さが目立ちます。スロットル開度10%~25%では思いのほか空燃比は整っています。
測定前の予想ではフルエキゾーストを装着した影響で排気の抜けが良くなり「燃料が足りていない」状況だと思っていました。しかし現状はその逆で燃料が濃いようです。


スロットル開度50%のパワーグラフ
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この開度からは燃料噴射量が多く、燃料濃いめに設定されています。フルエキゾーストに変更後でもこれだけ濃いということは元々かなり濃く設定してあるということがわかります。「加速感のたるさ」や「ドン突き」はこの濃さが原因かと思われます。


スロットル開度75%のパワーグラフ
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スロットル開度50%域と同様に燃料がかなり濃いです。特に低回転のアイドリングから5500回転までにかけては、かなり濃くなっています。これは燃料が濃い状態に追加でデジタル加速ポンプが仕事をしているからだとわかります。75%に向けてスロットルを急開していくと、純正ECUが追加で燃料噴射量を補正をしているということです。

特にこの仕様国の車両はそもそもO2センサーがついていませんので、フィードバックを基にクローズドループという機能は働きません。
二次エアをカットしていることもあり、部分的な空燃比の乱れはないものの全域かなり燃料が濃い状態になっています。

スロットル開度100%のパワーグラフ
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全開領域でも燃料が濃くなっています。9500回転以上ではなぜか空燃比が測定範囲外となりました。数回測定を繰り返しましたが同じ結果となりました。オートバイ側が二次吸気を行っている可能性も考慮しましたが、セッティング後は全くこのようなトラブルは発生しませんでした。パワーグラフには大きく影響していません。

④調整について
ICONⅢを使用して施工していきます。
今回は燃料噴射量の調節のみですのでサクサクと進めていきました。
測定したデータを基にざっくりと数値を入力していきます。
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あくまで簡易インジェクションコントローラーなので数値の振り幅が大きくなってしまいます。
左右及び斜めの設定数値差が大きくてもあまり気にしないで進めました。
ざっくりとしたマップ作製になりますが、セルが移動するときは隣り合う数値で計算された数値が補正されているはずです。
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イメージとしてはこのような感じです。常にセルを移動する際は間の数値を計算して補正しているだろうという予想です。
そのため極端な数値を入れない限りはトルク/パワーにギクシャクとした繋がりの悪さを感じないはずです。
他社製のフューエルインジェクションコントローラーでは横軸が250回転毎であったり縦軸が5%毎であったりと細かく設定できるものが多いです。それ故に作成に時間がかかります。
簡易サブコンではそこまで考えて作らなくても自動でやってくれるので非常に助かります!
補正可能範囲は-50%~50%ということで大抵の場合はカバー出来る性能を有しています。

ということで調整が終わりました。

⑤前後比較
・公開しているパワーグラフは補正してあります。(修正係数:SAE)

スロットル開度10%のパワーグラフ
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開け始めや街乗りでのパーシャル時に使用するスロットル開度10%です。
アイドリング付近から3000回転に至るまでの燃料噴射量を大きく減らしました。
ほとんど補正を入れなくてもいいかと思っていた領域ですが燃料噴射量を少し変更するだけで燃焼効率が上がり大幅にパワーアップ出来ました。
全体的に燃料を減らしていく方向での補正となりました。

スロットル開度25%のパワーグラフ
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続いてスロットル開度25%領域です。こちらも全体的に燃料が薄くなるように補正を行いました。
8000回転以上の高回転域では燃料を増減させてもトルクとパワーには差ほど影響はありませんでした。空燃比が10近くまで低くなっていたので薄めに補正しました。

スロットル開度50%のパワーグラフ
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この領域からは先程よりも更に燃料が濃く、全域の燃料を減らす方向で調整しました。空燃比は11前後と濃いめに燃料噴射していました。調整を行い、最もパワーが出るように燃料を増減させて落としどころを見つけました。この車両は空燃比11.5~12.5付近ではあまりパワーが出ず、空燃比13.0~13.5辺りが最適でした。
※車両には個体差がありますので参考までにお願いします※


スロットル開度75%のパワーグラフ
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この開度では調整前と大きく差をつけることが出来ました。
2000~4000回転ではデジタル加速ポンプの介入によって濃いめに出ています。
低回転域では空燃比を12.5~13辺りに合わせることで加速の鈍さを解消できました。


スロットル開度100%のパワーグラフ
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スロットル全開時のパワーグラフです。6000回転や8500回転などは若干濃いめの方がパワーが出ていました。現車セッティングをしてわかる特性ですね!この回転数では濃くしても薄くしてもこの空燃比から遠ざかるとパワーダウンしていきました。
そして9000回転以降では調整前の測定データと見比べると指定した燃料を適切に噴射していることがわかります。

ピークパワーは178.1馬力から185.6馬力に!燃料の噴射量調節だけで7.5馬力もパワーアップしました♪

⑥まとめ/感想
加速時のドン突きや加速時のたるさを解消しつつ全域のパワーアップが出来ました。セッティング前は「燃料が薄い傾向にあるのではないか」と予想していましたが、逆に燃料が濃すぎることでフィーリングの悪さに繋がっていたようです。スロットルの開け始めの10%開度付近では、空燃比だけで見るとあまり変化がないのにも関わらずパワーグラフでは大きく変化が表れています。これが現車セッティングの良さです。現車セッティングでは現車にあった最適な調節が出来ます。「ここは濃いほうがパワーが出る」や「ここはあえて薄いほうが...」などといった車両の特性や個体差に合わせて調節が出来るのでこのようにパワーアップに繋がります。
今回入庫したZX-14RはO2センサーが搭載されていません。だからこそエンジン保護を徹底するために燃料が濃い設定だったのでしょうか?フルエキゾーストを装着しても燃料が濃い状態を維持していたので珍しいパターンでした。

また使用したICON3ですが簡易セッティングツールでありながら詳細までセッティング可能でした。ボタンを何度も押すのは大変でしたが、直感的に触れるインジェクションコントローラーで非常にフレンドリーなUIとなっていました。セッティングに限らず、走行中のデータログ機能が優秀で、気になるパラメーターをいつでもモニタリング出来るのは他のサブコンに無い特徴ですね!

ということで今回の「ZX-14R ICONⅢ インジェクションチューニング」のご紹介は以上となります。最後まで読んでいただきありがとうございました。

「Garage414 ソニックチワワ」では「より速く・より扱いやすく」をテーマにパワーチェックやECUチューニングをはじめとするインジェクションチューニングを行っております。
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